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絶賛開催中! 東海大学湘南校舎松前記念館 特別企画展「受け継がれる祈りの心」と学生プロジェクト展示「神への祈り」

企画展趣旨

本学文明研究所に所蔵されている古代エジプト及び中近東コレクション(略称AENET)は考古遺物を約6千点収蔵しており、日本の大学でも最大規模のコレクションです。今回の企画展では、そのコレクションの中から選りすぐりの18点を展示しています。展覧会は2021年から23年にかけてクラウドファンディングを活用して行ったヒヒ神像(正式名称は「ホルス神の目を捧持するヒヒ像」)の調査研究・修復の成果報告を中心に、古代エジプトの神々にまつわる遺物を集めました。

古代エジプトの知恵の神であるヒヒ像は、コレクションの中で最も高い人気を誇っています。しかしクラウドファンディングに挑戦する前は、傷みが激しく、本体には大きな亀裂が幾筋も入り、特に手は落ちる寸前の状態で、とても展示に耐えられるものではありませんでした。

そこで2021年に東海大学が実施した「クラウドファンディング型社会発信研究補助計画」に応募し、同年の6月から7月にかけて学術系クラウドファンディングサイトacademistのプラットフォーム上で支援を呼びかけました。呼びかけた内容はヒヒ神像を科学の力によって徹底的に分析し、内部構造・表面の顔料などの組成分析・腐食金属の組成分析・3Dデータの取得などを通して、ヒヒ神像を「丸裸」にして後の保存修復に役立てたい、というものでした。これに応える形で148名のサポーターが資金援助をして下さり、プロジェクトが成立しました。

ヒヒ神像に対する調査はコロナ禍で予定より遅れましたが多くの研究者の惜しみない協力によって無事に終了し、107頁に及ぶ成果報告書もサポーターの皆様にお渡しすることができました。また、ヒヒ像を修復し、制作当時の姿を再現したレプリカを作成するという当初の予定を超えた成果を上げることもできました。

古代エジプト人は、世の中で起こるさまざまな出来事は神々の力によってもたらされると考えていました。なかでも太陽神ラーを国家の神として崇めていました。そのため、今回の展示した作品の中にも太陽が表現されているものがいくつかあります。さらに、人間の形をした神だけではなく、動物や昆虫の姿の神々も厚く信仰していました。現代の我々から見ると不思議ですが、古代の人々にとっては、人間の力が到底及ばないほどの能力を持った動物や昆虫を神として崇拝するのはごく自然なことでした。

 また、サブ展示では、東海大学チャレンジセンタープロジェクトEgyptian Projectの学生たちが総力を結集して「古代エジプト人の祈り」と題した展示を準備しました。こちらでは神々に対する信仰表現だけではなく、人々のあの世に対する怖れから生まれた来世観、埋葬習慣などを取り上げ、解説しています。

 古代エジプト人の祈りから生まれたさまざまな造形をご覧いただき、彼らの想いを感じていただけますと幸甚です。

文化社会学部アジア学科

山花 京子

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