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葬送用コーンの翻刻データを追加しました

東海大学の2022年度チャレンジプロジェクト「Egyptian Project」の学生たちが、古代エジプト及び中近東コレクションに所蔵されている葬送用コーン8点の翻刻を行いました。

学生たちは古代エジプト語の勉強会を開き、葬送用コーンに書かれた文字の解読に挑戦。実際のコーンの写真を検討し、JSeshのソフトウェアを使って文字を起こし、実際のコーンが縦書きの場合は翻字・翻訳しやすいように左から右に表記しました。

翻刻文は下記の資料番号をクリックしてご覧いただけます。

【翻刻掲載資料一覧】

SK202

SK203

SK204

SK205

SK441

SK442

SK443

SK444

 

【葬送用コーン(Funerary Cone)とは】

古代エジプト新王国時代にはナイル川の西側に多くの岩窟墓が造られました。最も有名なものは「王家の谷」に穿たれた王たちの岩窟墓ですが、その「王家の谷」の東側の丘陵地帯には廷臣たちの岩窟墓が集まる「貴族の谷」があります。王の墓のように大規模なものではありませんが、例えば第18王朝トトメス3世とアメンヘテプ2世(紀元前14世紀頃)に仕えた宰相レクミラーの墓は小規模ではありますが、彼が宰相として監督していた様々な仕事内容が壁面にびっしりと描かれており、当時のエジプトの社会の様子から外国との交流に至るまで多くの情報を提供してくれています。

そんな「貴族の谷」の墓入口は一人が通れるほどの狭い入口の両側に墓の持ち主の名と役職が刻まれているものが多いのですが、それ以外に装飾はなく、一見とても質素に見えます。

葬送用コーンは貴族の谷の墓の内部ではなく、外側から発見されています。これらのコーンは円錐形、角錐形が多く、土製釘のような形状をしていますが、中には変わり種として二連コーンや三連コーンなどもあります。これらのコーンは墓入口上部に一列に差し込んで「墓軒飾り」として使用したのではないか、というのが現在の通説です。「貴族の谷」の墓壁画には、墓入口にコーンのような丸いものが連続で描かれている例が8例あります。それらは墓上部にコーンのような丸いものが2‐3列並んでいます。実際にコーンが並んで配置されている状態で発掘されたりもしていますが、実物は墓の入口の上部にはありませんでした。従って、コーンは「墓軒飾り」であるのか、それとも何か別の用途を果たすものなのかは不明です。

 

葬送用コーンで最も大切な部分は、日本でいう「瓦頭」部分です。円形あるいは方形の頭部分には、被葬者の名前、役職、家族の名前、太陽神ラー崇拝の言葉などが刻まれています。被葬者の名から実際の墓と関連づけができる場合もあります。また、被葬者の役職や家族の名から家系を研究したり、当時の役職から当時の社会構造を知ることもできます。

葬送用コーンの研究は、Davies, N. de G., & Macadam, F.L, A Corpus of inscribed Egyptian funerary cones, Oxford, Oxford University Press, 1957によるコーンの集大成をはじめとして、Daressy, G., Recueil de cones funéraires, Memoires publiés par les membres de la mission archéologique Française au Caire, 8, 269-352やZenihiro, K., The Complete Funerary Cones, Maruzen, Ltd., 2009 などがあります。本学のAENET(Ancient Egyptian and Near Eastern Collections at Tokai University)には上記のカタログに掲載されているコーンの類例にあたるものが7点、未掲載で新出のコーンが1点あります。

 

 

 

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